CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition
巨軀を駆り、佐賀の山間を走った。
初夏、棚田には、まだ青い稲穂が揺れていた。
黄金色にはほど遠く、生命力をそのまま映したような深い緑。
照りつける陽射しと、湿り気を帯びた風が、夏を告げている。

最近は、季節が驚くほど早く過ぎていくように感じる。
気づけば秋が来て、また一年が終わってしまうのだろうか。
そんなことを、ヘルメットの中でぼんやり考えていた。
仕事のこと。
私生活のこと。
以前よりも、考え込む時間が増えた気がする。
思い通りにならないこともある。
将来への不安が頭をよぎる日もある。
けれど、バイクへ跨ると、不思議なことにその重さは少しずつ風に溶けていく。
エンジンの鼓動を感じながら、自分の意思でアクセルを開け、景色の中へ走っていく。
その時間だけは、余計な肩書きも、悩みも、誰かの期待もない。
ただ、自分とバイクだけ。

走り終えたあと、問題が消えているわけではない。
それでも、もう一度向き合えるだけの余白が心に戻っている。
だから僕は、何度でも走るのだと思う。
バイクは、ただの移動手段ではなく、趣味性の強い活動だ。
でも、それだけでは言い表せない。
僕にとってバイクは、本来の自分を取り戻すための、静かな回復の装置なのだ。

