時代が変われば、バイクも変わる。
絶対的な馬力やスピードがもてはやされた時代は終わり、環境性能や取り回しやすさ、電子制御の先進性がバイク選びの基準になってきた。
一方で、かつてジャパニーズスタンダードとして日本の道路を賑わせた「直列4気筒ネイキッド」というジャンルは、年々姿を消していった。
重い、燃費が悪い、排ガス規制に対応しづらい。
そう言われながら、一つ、また一つとカタログ落ちしていく中で、それでも最後まで残ったのが
──水冷4気筒CB1300と、空冷4気筒CB1100だった。

ここに、僕は一つの真理を感じる。
「最後まで残ったものは、一番優れていたから残った」
──それが、淘汰という時間の選別眼だ。
市場も、メーカーも、ライダーも、時代の流れとともに多くのモデルを選び、そして手放してきた。
だがそのなかで、“令和の時代まで”現役で作られ続けた直4ビッグネイキッドは、この2台しかない。
CB1300は、1990年代から受け継がれる「王道ネイキッド」の理想像を、最新の技術とともに磨き続けた。
CB1100は、「空冷」という時代遅れに見える技術であえて勝負し、それを様式美にまで昇華させた。
つまり、この2台は「古いから消えた」のではなく、「最後まで残れるだけの完成度があったから残った」のだ。
もちろん、他にも名車と呼ばれたネイキッドは数多くあった。
だが、それらが去ったあとも作り続けられたという事実は、「世界一の二輪メーカーであるホンダがこの2台に何を託していたか」の答えそのものだと思う。
王道ネイキッドの頂点に君臨し、”いつかはCB”と多くのライダーが憧れたのは、CB1300だけ。
空冷エンジンの味わいと鷹揚さの演出で感性に訴えるビッグネイキッドは、CB1100だけ。
時代を作り、かつてスタンダードと呼ばれた直4ネイキッドたち。
これらは、実は現代において最も「異端」で、最も「完成されたマシン」だった。
だから、僕はこの2台を選んだ。
どちらか1台だけじゃ足りなかった。
2台を併せ持ってこそ、直4ビッグネイキッドというジャンルが僕の中で完結する。
どちらも、最後まで残った名機。
そして、僕にとっても終のバイクになるだろう。